「ただいま!おっ、祐希起きてるな。じゃあ、早速作ろうかな・・・ペスカトーレ。」
『先生、おかえりなさーい・・・先生、今、なんて言った?』
日詠先生がテキパキとレジ袋から食材を取り出す音に掻き消されてしまった彼自身の言葉の語尾。
私は即座にそれを確認せずにはいられなかった。
彼は左手に真っ赤なトマトを握りながら口を開く。
「ん??ペスカトーレ・・・か??」
『ええ~、ペスカトーレ?!』
つい大声を上げてしまった。
同じぺのがつく料理でも、ペスカトーレは魚介類とトマトソースのスパゲッティ
私が作っておいたカチャトーレは肉料理だけどトマトを沢山使っているから、
まさかのトマトかぶりしちゃってる?!
「ん?!ペスカトーレ、嫌いか?」
そう呟きながらちょっぴり残念そうな表情を浮かべる日詠先生。
『ううん、大好き!!食べる食べる!!先生、ゴメンナサイ。先生が作ってくれるのペペロンチーノだと思ってカチャトーレ作っちゃった・・・トマト、かぶったよね?』
「おっ、カチャトーレ作ってくれたんだ。フランスパンも買ってきたからガーリックトーストもつけて、豪華に今日はトマトづくしというコトにしちゃえばいいよな。」
『・・・・・・・・』
「それともペペロンチーノ作るという手もあるけど、どうする?」
イタリア料理店でペスカトーレを食べたことあるけど、日詠先生が作ったソレは食べたことないから、この機会を逃しちゃいけない!
今日病院で感じてしまった胸のモヤモヤ感をすっ飛ばす為にもご馳走になって元気出さなきゃ!!!
『ペスカトーレ、処方して下さい!!』
「了解。」
夕飯のメインおかずが無事に決まったこともあってか、日詠先生は満面の笑みでそう返事をしてくれた。



