ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『あっ、マズイな・・・じゃあな!』

「行ってらっしゃい。」

『あっ、、今日は珍しく17時に仕事上がれそうだから久しぶりに夕飯、俺が作るよ。何がいい?』


なにはともあれ、心配顔が笑顔になってくれてよかった
相談できる人を見つけることができてよかった

何が食べたいと聴くと、遠慮気味に何でもいいって答えるばかりだったのに、


「ん~、それじゃ、名前の頭に”ペ”がつくパスタがいいな!」

『頭に ”ぺ” か・・アレかな?わかった!楽しみにしててもいいぞ。」

「うん、楽しみにしてる。」

『じゃあ、気をつけてな。祐希、また後でな!!』

こうやって少しだけヒントをくれるようになってよかった


どうやらこの茶番劇は結果オーライだったみたいだ


『遅刻だな。奥野さん、静かにキレてるよな。』

俺はニヤケそうな顔を引き締めながら、急いで会議室に向かった。





「患者さんを診ていた日詠先生もいらっしゃったことですし、カンファレンス、始めます。」


やっぱりカンファレンスに遅刻したが、俺より先に着いた福本さんが上手くいい訳をしておいてくれたおかげでお(とが)めなしで済んだ。
会議も奥野さんに睨まれながらも、彼女らしいメリハリのある司会でスムーズに終了。
今日の業務を全て終え、いつも帰宅前に立ち寄るNICU(新生児治療室)に行った後、着替えるために医局へ向かった。


『シーフード、さすがになかったよな?帰りに買っていかなきゃな。』


伶菜が食べたい ”ぺ” のつく料理に必要な材料が冷蔵庫の中にあるかを思い出しながら歩く。
その途中、コツコツという靴音がこっちに近付いてくるのが聞こえた。



「日詠くん、お疲れ様。今日はもう上がり?」

『・・・・・ああ。』

その靴音の主は大学時代からの同期である女性内科医師の三宅。