【Hiei's eye カルテ28:探られる同居人】



「日詠くん、今日15時からカンファレンスだけどさ、部長は午前中に急患が入った影響で外来診察が長引いているらしいから、先に始めていてくれってさ。」

『今日のカンファ、司会って奥野さんですか?』

「そうそう、ちなみに、議事録の書記は日詠くんだから。」

『忘れてました。』

「忘れていてもやってもらうわよ。だから、遅刻しないでね。」



昼休み、缶コーヒーを買いに行った売店で奥野さんにカンファレンス遅刻厳禁と念を押された。

患者さんについての情報交換や治療方針の検討などを考える話し合いなら、絶対遅刻なんてしない
けれども今日のカンファレンスは産婦人科の経営面に関すること
大切なことなんだろうけれど、その時間を患者さんと話をする時間に充てたい

そう思ってしまうのは、俺が自分勝手であるからだろうか?


『カンファレンス、早く終わるといいんだが。』

正直面倒臭いと思いながら、会議室へ移動した。


その途中で、同じ会議室へ向かわなくてはならない人物が道草をしようとしている姿を見かけた。

道草していたのは、産婦人科病棟師長の福本さん。

彼女が道草するきっかけ。
それは、見慣れた小さなクマの縫いぐるみがぶらさがったベビーカーの中にいる子供。

そして、

『そういえば、今日、検診に行くって言ってたな。』

その背後に立っている人物・・・・伶菜だった。



いつも家で顔を合わせているから、時間のない俺は敢えてそこを通らずに会議室に向かえばいいはず

『福本さん、会議。既に遅刻してるんだから、早く!!』

でも、福本さんと楽しそうに話す伶菜を遠目で見るだけの素通りすることなんてできなかった。