【Reina's eye ケース28:再会の影に潜む視線】



日詠先生、祐希、そして私の3人暮らしが始まって約4ヶ月が過ぎようとしていた。

産科医不足の声が高まってきている中、現役バリバリの産科医師である日詠先生は仕事に邁進する毎日を送っている。
一方、私はというと、仕事をすることもなく、日詠先生の家で家事をしながら祐希の子育てをするのんびりとした日々を過ごしている。


お互いに物理的なすれ違いは多いものの、それぞれがいい距離感、いいペースを保てている。
私達の毎日はそんな毎日。

そんな中でも3人が一緒になることができる時間は
一緒にご飯を食べたり
一緒にTVを観たり
一緒に買い物に出かけたり

限られた時間の中で、日詠先生と私は
兄と妹として、その時間を大切に過ごしていた。

その中で祐希は順調にスクスクと成長。
年1回、心臓手術をして下さった東京の日詠先生(日詠先生のお父さん)の診察を受けることになっている。

それ以外では、月1回、日詠先生が勤務している名古屋南桜総合病院の小児循環器科へ定期健診に通う程度で済むくらい、彼の体調は安定している。



「あっ!伶菜ちゃん!!久しぶりーーーー」


その声を耳にしたのも、もうすぐ生後7ヶ月になる祐希の定期健診で訪れた病院の受付だった。


『福本さん!!』

「うわ~祐希クン、大きくなったわね・・というか初対面だから初めましてだよね!!!!! 」

『御無沙汰しています。おかげ様で無事に出産、手術を終えて名古屋に戻っていました!』

「良かった~。祐希くんも顔色もいいし、順調そうね♪・・・・良く頑張ったわね、心臓の手術!!」


久しぶりに再会した福本さん。
彼女と会うのはこの病院から東京の大学病院へ転院する前の時以来。
威勢のいい声でそう声を挙げた福本さんはさっとその場にしゃがみ込み、ベビーカーに乗っている祐希の小さな手を彼女の手に取って握手してくれる。


「ママのゴハン、おいちいでしゅか?どうでしゅかあ?」


赤ちゃん言葉で話しかける福本さんにニッと笑いかける祐希。
私も一緒になって傍にしゃがみ込んで福本さんと祐希のやりとりをのんびりと眺めていた。