ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




でも、その夜風が止まった瞬間。
伶菜のあの甘い香りをより近く感じたその時。


『身体、冷えちゃうから・・・もう寝よう。』


俺達を照らし続ける月明かりの存在を再び感じたせいなのか

自分が今していることが、
そして
自分の心の動きが
”兄妹という枠から外れてしまっているのではないか?”

そんな想いが頭を過ぎり、彼女の体を包んでいた自分の両腕を離した。



そして、”兄妹という枠” に再び填まったほうがいいと思った俺は

『でもその前にもう一度、身体をあっためてやるから。・・・おいで・・・』

そのうち教えてやると伝えていたお袋直伝のホットミルクを作り方を彼女に教えた。
嬉しそうにそれに耳に傾けてくれた彼女。



それを目の当たりにした俺は

”その枠から外れそうなら、自らしっかりとその枠に填まるしかない”

なんとなく曖昧な関係でいるという方法を選べない不器用な俺はこの時、
・・・その枠に填まるという方法を選んだ。


その枠が、俺自身を雁字(かんじ)(がら)めにしてしまうことも知らずに・・・