ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



ひんやりとした夜風が少し強めに吹き始めた。
体を冷やしてはいけないとホットミルクと一緒に持ってきたひざ掛けをそっと彼女の体に掛けてやる。
マグカップを両手に持ったまま、俺の様子を窺うように先生?と振り返る彼女の唇の血色はいい。
どうやら夜風は彼女の体を冷やすというような意地悪はしていないようだ。


『今、未熟ながらも俺がこうやってやって行けているのは親父とお袋にちゃんと甘えられる場所を与えて貰っていたから・・・』

その夜風が今度は過去の話をしている俺の背中を押す。


『だから、今度は・・・今度こそ・・・俺じゃ力不足かもしれないけれど・・・お前にそういう場所を与えてあげたいんだ。』

自分の心の中にある想いを曝け出せばいい

そして

『でも、お前の涙にも、きっといろいろワケがあるんだろう?だから・・・もう泣くなとは言わない。もう、ひとりきりで泣くな・・・』


それを受け止め、涙を流す彼女を
すぐ傍で
自分の腕の中で
ちゃんと支えるのが俺の役目である・・と。

そう思った俺は少し丸くなっていたの彼女の背中を包み込むように抱きしめた。



彼女の主治医を自ら降りたあの日
俺は彼女の守り方がわからなくなった
でも、自分の腕の中にいる彼女の前髪をそっと揺らした今日の夜風がそっと教えてくれた
こういう守り方もあるのだ・・・と。