「ほら、色ボケしてないで、仕事しろよ、産婦人科のエース♪」
『色ボケとかじゃないですから・・・・それに俺、産婦人科のエースとかなんかじゃありませんから。』
「ふ~ん。医局のデスクの引き出しで見つけたぞ~。”家族でお出かけガイド”っていう雑誌にドッグイヤーがあったのを。」
『・・・・また引き出し、開けたんですか?』
「ガサ入れ、あたしの楽しみなんだもん♪ HなDVDとか、コンドームとか、何か怪しいモノ出てくるかな~って。」
医局の引き出しにそういうモノ、入れておくわけないだろ?
ドックイヤーとかしてある家族向け雑誌が見つかるのも、俺の頭の中を覘かれているみたいで、恥ずかしいけどな
『とにかく、俺のいない時に引き出し開けるとかやめて下さい。』
「わかった。今度はナオフミくんのいる時にガサ入れする。」
全く動じずに涼しい顔でそう言い放った福本さん。
これ以上彼女にやめてというのは逆効果だと悟った俺は、 軽くギロリに睨んでから電子カルテで気になっている患者さんの病態を確認し始めた。
「そんなに怒らないでよ~。あたしなりにナオフミくんに貢献したと思うけど?」
『俺の携帯番号とかアドレスとかを伶菜に伝えた・・ってことですよね?』
「バレた?っていうか、伶菜ちゃん、連絡くれたんだ?」
『・・・・・・・』
福本さんが勝手に俺の個人情報を漏らしていたのだから、自分が怒ってもいいはず。
それなのに伶菜達が東京に入院していた時に、彼女が俺にくれたメールをくれたことも想い出して、つい頬が緩んだ。
「うわ~、こいつの色ボケ、重症だわ。」
『ほっといて下さい。』
「ほっておけないわよ~。合理的な冷めた恋愛ばかりしていたナオフミくんのこのヘタレぶりは!!!!!」
『ヘタレって・・・』
「伶菜ちゃんも、あたしにとっては娘みたいなもんだから・・・泣かせるんじゃないわよ。泣かせたりしたら、遠慮なく、アンタのこと、シメるから。」
逆に睨まれる始末
言われたい放題だ
まるで、伶菜が俺の恋人になったみたいな言い方だよな?
伶菜のことを泣かせたりするヤツをシメるのが俺の役割なはずなのに