あれ?日詠先生?
部屋の中が暗くてはっきりとは見えないけれど、
私、なにか、マズイこと言っちゃったかな・・・・??
『日、詠、先生?』
「あっ、ゴメン。コレなんのスイッチかなって、ふっと思っちゃって・・・きっと祐希も気に入ってくれるよな・・」
あっ、いつもの日詠先生の優しい顔
なんかマズイ事なんて、気のせいだったかな?
「伶菜、あのさ・・・なにか足りないモノとかあったら遠慮なく教えてくれな。」
いつもの穏やかな語り口調
きっと私の気のせいだったんだ
『ハイ!』
私はたった今自分の頭の中に過ぎっていたことを彼に悟られないように自然な返事をするように心がけた。
「祐希も眠ってることだし・・・ゴメン、俺、ちょっとクルマに忘れ物したから取りに行ってくる・・・・すぐ戻るけど、のんびりしててな。」
日詠先生はローテーブルに置いてあった鍵を持って急いで出かけてしまった。
忙しそうな日詠先生とは対照的に、何もすることが見当たらなかった私は、祐希が眠っている寝室へ戻り、ベッドに腰掛けて、スヤスヤ眠る彼の顔をじっと見つめた。
『至れり尽くせりだなぁ・・・このベッド、気持ちよく眠れそうだし。』
ゴロンと寝転び、気持ちのいい寝心地を実感した瞬間、さっきの”一緒に寝る?”という日詠先生の問いかけを思い出し、慌てて飛び起きた。
『お兄ちゃんなんだもん。あり得ないよね?こんな大人になって一緒に寝るとか・・・』
今、自分がいるこの状況が現実なのか、それとも夢なのかと戸惑っている最中。
コンコン!
「ココにいる?」
『あっ、はい。』
この家の主はちょっぴり頬をピンク色に染めたまま、さほど大きくないレジ袋を手にぶら下げて戻ってきた。
「もう夜は結構冷えるよな。ハイ、これ。食べよっか。今日、移動で疲れたし・・・手抜きでゴメンな。」
差し出されたレジ袋を受け取り、中を覗いてみると、保温効果のある白いスチロール製の容器に入ったお弁当が2個とお味噌汁らしき容器も2個入っていた。
すっかり夕食のコトなんかも頭からスッポリ抜けていた
ダメだな、私
すっかり日詠先生に甘えちゃってるよ



