ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



そして、私は夕方から食事もとらないまま眠り続け、翌朝7時まで目を覚まさなかった。

目を開けたものの、あまりにも長い時間眠っていた為か、寝返りをうとうとしてもなかなか身体が動かない。
静かな病室内にギシギシっとベッドが鈍い音が響き、しまったと思ったのも後の祭り。


「おはようございます♪」

その音で起こしてしまったのか、私の足元にある洗面台のほうから女性の声が聞こえて来た。



『お、お、はようございます。』

突然の挨拶に驚いた私は慌ててベットから起き上がり少しだけカーテンを開けた。


「あっ、驚かせてごめんなさい。そんなに勢いよく起き上がらなくてもいいよ。」

その人は心配そうな顔をしながらも優しく笑いかけてくれた。


「挨拶、遅れちゃってごめんなさい。私、村上っていいます。宜しくね♪」

『あっ、そんな・・・私こそ挨拶が遅くなってすみません。私、高梨って言います。こちらこそ宜しくお願いします。』


私は人見知りが激しい性格もあり、つい顔が強張ってしまう。
それでも自分なりに必死に笑顔を(こしら)える努力をする。


「私ね、今、お腹に2人目の赤ちゃんがいて・・・妊娠18週なんだけど子宮頚管が凄く短いらしくてね。 気を付けないと赤ちゃんが出てきてしまうんですって。だから、来週、子宮頚管を縛る手術を受けるんです。」

村上さんは私の入院事情を尋ねる前に自分の事をお腹を擦りながら丁寧に話してくれた。
それにより、彼女の穏やかそうな人柄がなんとなく伝わってきて、自分のことも話してみようという気になった。