【Hiei's eye カルテ24:ミステイクから得た気持ち】



東京から伶菜と祐希を連れて帰ってくる道中。

手術後間もない祐希の体になるべく負担をかけないような運転をしたい
伶菜にあまり気を遣わせないようにしてやりたい
同居するという提案に対する返事を伶菜がくれるのだろうか

俺はそれらについて考えながら走っていた。


それだけでなく、もうひとつ考えていたことがある。

それは

『星崎で降りる・・・か?引越しの荷造りはしなくても・・・・大丈夫だ。』

同居したいという返事をくれた伶菜が一度、ウチに帰ろうと彼女の自宅がある星崎インターで降りて欲しいと言った時に、俺が動揺せずにはいられなかったこと。

それは伶菜の友人の杉浦さんから厳しく箝口令が敷かれていたこと。
だからその答えは自然の声が小さくなる。
どうやらはっきりと聴こえていなかったらしい伶菜にもう一度言って欲しいと催促された俺。

この時点で彼女に詮索されるわけにはいかないと話を逸らすために持ち上げたのは、俺達の過去の話。

でも、話を逸らすための話題としては、明らかにミステイク
それは俺の心の奥深くにしまっておきたい過去だから



けれども、彼女には知ってほしいと思う自分もいる

まだ彼女に自分が兄として一緒に暮らしていた過去がどんなものだったのか、彼女に詳しい話をしていなかったから・・・

その話をすることできっと俺は
彼女の兄として再び一緒にいることができる
俺達の過去の話はその保険みたいなもの

ミステイクな話題であったはずなのに、そう思った俺は彼女に自分の中で秘めたままの過去の話を一部分だけ伝えた。


15才の時、単身で伶菜とお袋を捜しに名古屋まで来たけれど、見つけられなかったこと
そして
大人といわれる年頃になっても、お袋の最期の別れにも会えなかったこと

それらが自分が秘めたままだった過去の話の一部分