「それに、俺達のお袋が亡くなったという頃、俺は丁度シカゴにある大学の医学部に留学していて・・・お袋が亡くなったコトを知ったのは、彼岸に親父の墓参りに行った時、墓石にお袋の名前も刻まれていたのを見つけて・・・・亡くなった日もそこで知ったんだ。」
『・・・・・・・・』
「葬式という悲しいけれど、でも唯一キミに再会することのできるきっかけすら失っていたコトもその時に気が付いた。」
そんな
お母さんの最期すら会えなかったなんて
8才で生き別れた親子ってそんなにも辛い関係になってしまうの?
いくらアメリカに留学していたって
私達の母親が進行性の病気で余命わずかという状況になってもそれを今のご両親から知らされないなんて
辛すぎる
辛すぎるよ・・・
「でも、もしかしたら・・・偶然なんかじゃないかもな。」
『えっ?』
「俺がキミに・・・伶菜に再び会うコトができるように親父達がキミを俺がいる笠寺に引き寄せてくれたのかも・・・」
そんな、そんな偶然って・・・
神様はちゃんと、いるんだね
それとも、先生の言う通り
お父さん達が・・・私が日詠先生に再会できるようにそう仕向けてくれたの?
「星崎出口出たけど、家、何処かな?」
涙で完全に歪んで見える私の視界。
車が星崎出口から一般道に出たことすら気が付いておらず、先生の問いかけでハッと我に返った。
私は泣いているのがバレないよう右手で鼻をギュッとつまんだり放したりしながら、自分のマンションまでの道のりを彼に丁寧に伝えた。
そして、マンションのすぐ傍の角を左折して車を停めた日詠先生は私の方へ振り返り、私の頭に手を載せてくれた。
「もう、泣くな・・・」
『・・・・・・』
彼の大きくて温かい手で頭を包まれた私。
「傍にいるから・・・」
『・・・・・・』
「俺が傍にいるから・・・だから、もう泣くな。」
きっとお父さんが生きていたらこんな風に慰めてくれたのかもしれないと直感的にそう感じた。