笠寺は通っていた高校までの通り道上にあった街
下校途中に、CDショップや鬼まんじゅうの美味しい和菓子屋さんによく立ち寄ったりしてた
もしかして、今までも日詠先生と道端ですれ違ってたりしたのかもと思うと、なんか不思議な気分になる
「そういえば、キミに初めて会ったのも笠寺だったな・・・ま、小さい頃のキミを知っている俺は初めてじゃなくて、久しぶりなんだけど・・・」
今度こそはっきり聞こえた彼の声。
なんか言い回しがさっきと違うように聞こえたけれど
まぁ、とりあえずはいいかな・・・
そういえば、私、新笠寺駅で日詠先生に命を拾って貰ったんだ
なんかもう凄く昔のように感じる
この数ヶ月で本当にいろんなコトがあり過ぎて・・・
『ええ、近いですよね!いつもは星崎本通り駅を利用しているんですけど、その時は、自ら命を絶とうとしている姿を近所の人とかに見られたくなかったから、2駅歩いて新笠寺駅に辿り着いちゃったんです。』
「・・・偶然ってあるんだな・・・」
ルームミラー越しに見えた日詠先生の顔は
遠い過去を思い出しているような、そんな顔に見えた。
『偶然って???』
「キミが新笠寺駅まで歩いてこなかったら、俺はキミにこうやって再会することはなかったんだ・・・」
再会
そういえばさっきもそんなことを言ってた
日詠先生が自分の兄として一緒に暮らしていたことを知らされる前までは、
新笠寺駅で助けられたのが彼との出逢い
そう思ってた
「俺は、8才で東京の日詠の家に引き取られてしまって以来、名古屋に、星崎に住んでいたはずのキミに会うコトができなかったから。」
東京の日詠先生に引き取られてから、私達は顔を合わせることがなかった
私に至っては、兄がいたことすら知らなかった
「でも、どうしても妹であるキミの顔が見たくなって・・・15才の時に日詠の両親には内緒で一人で東海道線の鈍行列車で笠寺まで来てみたけれど、前に俺達が住んでいたマンションにキミとお袋の姿はなかったんだ。」
そして日詠先生はドアミラーで後方確認をした後にゆっくりと口を開いた。



