随分前の記憶
それは滅多に取れない親父の休暇を利用した家族での浜名湖での潮干狩りの想い出
運転席の親父
潮干狩りの道具を手に持ってはしゃぐ幼少時代の俺は助手席
お袋はまだ乳児だった伶菜を抱っこしながら後部座席に座る
助手席で ”バケツいっぱいアサリを採る!!!” と声高らかに宣言する俺の隣で運転する親父も凄く楽しそうで、お袋も伶菜に ”伶ちゃんもやる?” と優しい笑顔
その想い出も俺にとって大切な温かい記憶の一部
伶菜と祐希君とのドライブはその想い出を鮮明に想い起こさせてくれる
そして、産婦人科医師として従事する親父の姿だけではなく、
こういう父親としての姿
それにも自分は憧れ続けているということも感じさせてくれる
それによって俺の中で沸き立った感情
それは・・・
伶菜の兄という立場でここに自分がいるけれど、
伶菜が連れ添いたいという相手ができるまでは
自分が祐希君の父親という立場でいたい
そう思わずにはいられない
仕事上、子供に触れることは多いけれど、実際に子育てをしたことはない
だから俺自身も戸惑うことも多いだろう
でも、伶菜となら、一緒に悩んで、一緒に考えて、一緒にどうすればいいかを導き出す
それをやってみたい自分がいる
でも、それはやはり伶菜次第
彼女が一緒に住みたいと言ってくれなければ
それは叶わない
一緒に住むこと
それは実際のところ、
伶菜のためというより俺のためなんだ
伶菜と彼女の息子と一緒に家族という形を再び手に入れたい
他の誰でもいいわけではなく、彼女らとともに家族になりたい
そういう俺の願望を手に入れるため
でもそれは
温かい家庭に憧れ続ける俺の自分勝手な願望なんだろうな
そんな願望を叶える方法は意外にも身近に転がっていたりするのに・・・



