「日詠先生?!」
伶菜はきっとあの大きな瞳をくりくりさせて、ビックリするんだろうと想像していた。
しかし、実際の彼女はまるで化け物を見たかのように顔を歪めながら俺を見上げる。
それが面白くて堪らない様子の杉浦さん。
俺が杉浦さんと電話でやり取りしていたことについて彼女にお礼を言うとそれを伶菜は険しい顔で聴いている。
『・・・・・・・・・・』
俺、なんかマズイことでも言ったのか?
ただ、電話してくれたことにお礼を言っただけなのだが
ここに来て、主治医だった俺が、他人と伶菜のことを話しているという守秘義務違反していることを伶菜が気がつき、不快に思ったのか?
いや、待てよ
俺は杉浦さんに伶菜のことを話したって言っていないぞ
杉浦さんは一応、俺の担当患者でもあるから、彼女と病院の電話で話しても問題はないはずだ
でも、伶菜に不快な想いをさせたなら、謝らなきゃな・・・
『ゴメン・・俺。』
「日詠先生、何、謝っているんですか?彼女が怖い顔しているのは、先生の不手際とかそういうのじゃないですから。」
俺の不手際じゃなきゃ、なんなんだ?
それ以外に思いつかない
でも、杉浦さんからは謝らなくてもいいみたいなことを言われてる
ダメだ、わからない
もはや説明能力を失いつつあった俺の代わりにその電話の内容を杉浦さんが伶菜に詳しく説明してくれる。
そのせいで想い出してしまった。
杉浦さんと電話していた時に、彼女に伶菜をどう想っているのかを根堀り葉堀り聴かれたことを。
誘導尋問にかかったかのように、自分の想いを曝け出されそうになりそうなところをなんとか堪えたことを。



