ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『ああ、こんにちは。杉浦さん・・・でしたね?』

「えっ。先生。こんなにも沢山、患者さんがいるのに、私のこと、覚えて下さっていたんですね~。光栄ですわ。」


そりゃ、覚えてる
この人のせいで・・いや、この人のおかげで伶菜の欲しがっていたベビー靴を彼女に届けることができたのだから


『今、電子カルテで名前をちょうど見ていたところなので。』

でも、そんなことは言えない
俺は伶菜のことを知らないって目の前の彼女にハッキリ伝えたのだから


「そうですよね~。で、がん検診の結果はどうでした?」

『ベゼスダシステム上でNILM。というわけで異常なしです。』

「良かった~!!!!仕事が忙しくてもうしばらく検診受けていなかったから、安心しました。」


一応心配していたんだな
このぐらいの年頃の女性って、まだまだ子宮がんに対する意識が高いとは言えないから


『でも、1年に1度は受けて下さい。』

「そうですよね。でも、伶菜のことがなかったら、もっと先だったかも。」

『・・・・・・・・』


やっぱりそうだったか
この人が検査を受けに来た日
俺を偵察しに来たって面と向かってはっきり宣言してたもんな



「で、日詠先生はベビー靴、無事ゲットしたんでしょ?」

『・・・・・・・』

とうとう来たか
今度は偵察ではなく、確認にだ

となると、この後、どう出てくるんだろう?


でも、俺は守秘義務のある医師だ
関係のない人間に患者さんの情報を漏らすわけにはいかない



「というか、伶菜、凄く喜んでました。your babyという謎のジグソーパズルのピースの存在にも。本人はまだその送り主が日詠先生だと信じていませんけどね。」

『・・・・・・・』


パズルの存在を知っている?!
ということは、この人、杉浦さんが伶菜の友人ということは事実だったんだな

どこまで伶菜の事情を知っているかはわからないが



「それに、日詠先生。伶菜のお兄さん・・なんですって?」

『・・・・そんなことまで、知ってるん・・・あっ。』