ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




置き去りにされた俺がすることと言ったら、もう一度、伶菜達の情報が詰まっている東京医薬大からのメールを見ること。

そして、

『退院予定日、決定か。』

そして、白衣のポケットに入れてあるスケジュール帳にその日を書き込むことぐらいだった。

そんな中、院内PHSではなく、個人の携帯電話のメール受信音が鳴った。
見たことのないメールアドレス。
でも、そのアドレスの中で見つけた、reinaという文字。

俺は躊躇うことなく、そのメールを開封した。



突然のメールにて失礼致します。

先日はお忙しい中、遠方まで足を運んで頂き、
ありがとうございました。

よろしかったら一度、先生とお会いしてお話がしたいです。
病院を退院して名古屋に戻ったらまた連絡します。




『やっぱり伶菜だったか。どうやって俺のアドレス、知ったんだ?・・・って、まあ、どうせ、福本さん辺りが知らせたんだろうな。』


どこからかわからないが俺のメールアドレスが漏れて、わけのわからない送信先からメールが届く・・・そういう時は開封せず、送信先も保存しないでそのままスルー
けれども、このメールは保存しておかなくてはならない


『メールで受け取ったアドレスの保存ってどうやるんだっけ?』

滅多にしないことをするのは、戸惑うものだ
嬉しい戸惑いだけれども


『よし、保存できた。伶菜も忙しいだろうから、彼女がまた連絡してくるのを待てばいいんだよな?』

この時の俺はそれで安心していた。
この時の俺は。


でも、雲行きはあっと言う間に変わる。

「日詠先生、こんにちは~。検診の結果、聴きにきました。」

外来診察室のドアを勢い良く開けてそう言ったこの人物のせいで。