「日詠クンのお父さんもマメだよね。普通、教授とかって、診療情報提供メールとかって部下にやらせるんじゃないの?」
『普通はそうだと思いますが、結構、自分できっちりやりたい人ですから。』
「そういうとこ、似てるわね。でも、伶菜ちゃんはあたしに任せてよかったでしょ?内診とか。」
『・・・・・・・・』
以前は、なんで自分の担当患者の内診を他人に任せなきゃいけないんだ・・・そう思った
内診という診療行為は女性器を手で触れてその状態を診るという重要な診療行為だからこそそう思った
しかし、女性にとっては、自分の体の奥を見られているという心理的負担も大きい行為だと思われる内診
それを少しでも理解しようと努力しているからこそ、内診を行う時は、女性器を《見ている》というよりも体の臓器の一部を《診ている》という感覚を持っていられる
また、内診を診療上重要な診療行為だからと割り切っているから、平常心を保ちながらそれを行えている
しかし、幼い頃を知っていて、自分が守りたい存在である伶菜
そういう私情を抱く相手である彼女に対し、俺はそういう感覚を持ち続けられる自信がない
だから彼女に対する内診行為なんて
彼女との距離が近付き始めた今は以前よりももっと、無理なような気がする
医師としての自分の腕を疑い、彼女の主治医を自ら降りた俺は
内診どころか、医師として彼女に関わることすらもうできないんだろうけどな
「伶菜ちゃんの二人目のベビーはいつになることかしらね~。その時はあたしがきっと主治医になるわ。間違いない。」
なんでそんなこと、言い切れるんですか?と俺に反論させる隙を与えてくれないまま、奥野さんは俺を置き去りにした。



