『真里、アタシ、日詠先生に甘えちゃってもいいのかな・・?』

「・・・いいんじゃない?甘えるじゃなくて信じてみるでしょ?日詠先生を・・アンタの兄さんを!」

真里は満足そうな顔で私の腕を(ひじ)でぐいぐい突き、じゃあ、またね♪と帰って行った。




彼女に背中を押された私は早速、携帯電話のメール画面を開き、福本さんから貰った手紙に書いてあった日詠先生のメールアドレスを入力した。

そして、メールの本文画面を開いて、彼へのメッセージを入力し始めた。


【To】日詠先生
【件名】 高梨 伶菜です。

先日はお忙しい中、東京までお越し頂きありがとうございました。
おかげさまで祐希の回復も順調のようでもうすぐ名古屋に帰ることができそうで す。
それでですが、




この先、どう書いたらいいんだろう?
日詠先生と一緒に暮らしたいということを書きたいんだけど、彼がどういう反応をするのかが気がかりでどうやって表現したらいいのか、わからない

顔も見えず、声の抑揚も確認できないメールで
どうやって自分の思っていることを伝えたらいいのか
どうやって相手の反応を確かめたらいいのか
わからないよ

そう思った私は既に書き込んでいた本文画面のメッセージをゆっくりと消去してもう一度メッセージを書き始めた。


【To】 日詠先生
【件名】 高梨 伶菜です。

突然のメールにて失礼致します。
先日はお忙しい中、遠方まで足を運んで頂き、ありがとうございました。
よろしかったら一度、先生とお会いしてお話がしたいです。病院を退院して名古屋に戻ったらまた連絡します。



散々迷った挙句に私が彼に送ったメールは
自分と祐希の現況を伝える言葉も
一番伝えたかった ”一緒に暮らしたい” という
先生へのお願いの言葉も一切書いていない
ただ日詠先生に直接会う約束を取り付けるためだけの事務的なものになってしまっていた。