ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




『そうらしいの・・・名古屋の病院に通っていた時にここの病院に転院するように言われた時に、日詠先生本人から聞かされたの。』

「でも、伶菜、母親と二人暮しだったって言ってたよね?」

『・・・うん。私と日詠先生は、私の父親が亡くなった時まで・・・私が1才になる頃まで一緒に暮らしていたんだって。』

「伶菜が1才か・・それじゃあアンタは覚えてないわね、一緒に過ごしてきた証拠とかあるの?一緒に写した写真とか。」

真里は再び右手を顎に当てて、私と日詠先生の不可解な関係を何とか紐解こうとしている。


『私が持っているアルバムは家族で写っている写真がほとんどないの・・・・父親が仕事で忙しくて旅行とか行かなかったから家族写真写す機会がなかったって、母が言ってた。でも・・・』

「でも?・・でもって何?伶菜?」

『ついこの間、届けられたベビー靴の中にコレが入っていたの。』

私はハンカチできれいに覆っておいた、たった1ピースの空色のジグソーパズルを照頭台から取り出して真里に見せた。


「パズル?!しかも1ピースだけ???your babyって刻印されてる・・・・」

私からそれを受け取った真里はパズルの刻印部分を人差し指でゆっくりとなぞっている。



『そう。1ピースだけなの。でも私も同じ色のパズルを1ピースだけ持っていて・・・父親が手作りして作った大切な形見なの。』

そう言いながら私は自分の左手を差し出して
真里の手の中にあるパズルのピースを自分に戻すように促した。

そして、彼女の手から自分の手の中に戻されたそのピースと鞄の中から取り出した私の名前が刻印されてあるもうひとつのピースを組み合わせて見せた。



「ちゃんと繋がってる。色褪せの具合も殆ど同じ・・」

真里はポツリと呟き、呆然とした表情のまま私の方を見た。


「・・・伶菜・・・アンタが欲しがっていたベビー靴をここまで届けたの、やっぱり、日詠先生だよ・・・・」

『・・・・・・』

以前、自分がそう予想していたコトをズバッと真里に言い放たれてしまった私はただ、息を呑むしか反応できない。