先を行く彼女の姿を見失っていたものの、廊下の所々に残っていた血痕は彼女の点滴ルート針の挿入部から出血したものだろうと察し、その血痕を頼りに彼女を捜す。
検査室前の廊下近くにある階段。
そこでも血痕を見つけた。
階段を昇っていくも、血痕が減っていて、このまま昇り続けてもいいのか迷った。
このまま登っていくと、その先は屋上だ
もし彼女が屋上に向かっているのなら最悪の事態を考えずにいられない
しかもこの病院の屋上
そこは俺にとって特別な場所
そこで彼女の身に何かが起こったら
多分俺は、自分の足で立っていられなくなるだろう
彼女が向かった先が屋上でないかもしれない可能性もある
でもその可能性を信じ、他を捜しているうちに
もし彼女が屋上に向かっていたら
多分、彼女が起こすであろう行動に間に合わないだろう
今、彼女を助けられるのはたったひとり・・・・俺だけだ
『屋上だ。』
俺は右手の拳をグッと握り締めながら、屋上へ続く階段を勢い良く駆け上がった。
屋上のドアの前にもあったうっすらと残っていた血痕。
”ここにいる”・・・そう確信した俺は迷うことなく屋上のドアを開けた。
眩しい光が開けたドアの向こうから差し込み
その眩しさのあまりに目をしかめずにはいられない
それでも前を向いた俺の目の前には
『いた・・・・』
広がる秋の青空の真下でそれを見上げる彼女の姿があった。
『無事みたいだな、とりあえず。』
最悪の事態に至っていなかったことに安堵し、彼女の後姿を見守る。
本当ならもうどこへも行かないように・・・とその手を掴みたいところ
でも、ついさっき俺は検査を急いで、彼女を追い込んだ
今度ここで俺が対応を間違えたら、俺の手で彼女を傷付けることになるだろう
それは絶対に避けたい
だからもう少しこのまま様子を見よう
そう考えた矢先
『まさか・・・・・・・』
彼女がフェンスのある場所のほうへ歩き始めた。



