今は彼の地元である静岡県内の公立高校で数学教師をしている彼。
医療と教育という畑違いの世界にいることもあってか、難しいこととかを考えずに付き合い続けている。
付き合いが長いだけあって、俺のちょっとした異変も取りこぼしたりしない、
俺にとって兄貴みたいな存在。



「言えよ。ほら。」


今、ここで、”なんでもない” とでも言ったら、
じゃあ、またなとすぐに電話を切られる
ただの眠気醒ましなら、こんな夜遅くに電話しない

いつもの自分なら、
仕事やって、その隙に眠って、たまの休日なら自宅で科学雑誌とかの本を読んだり、自炊をしてみたりと自分のペースを崩したりすることを好まないのに

こうやって、東京までクルマを走らせたり、
自分の居場所に他人が踏み込むことを嫌う自分が、一緒に暮らそうなんて提案したりと
ここ最近の自分がいつもの自分でなくなっていることに若干戸惑いを感じているからだ

だったら、ちゃんと入江さんに言うべきだ
ここ最近の俺の状況とやらを・・・・



『伶菜が見つかったんです。』

「伶菜?・・伶菜ってあの、伶菜さんか?」

入江さんがは 俺がずっと伶菜を捜していたことも知っている数少ない人。



「どこに?どういうことだよ?って、お前、今、伶菜さんと一緒にいるのか?」

『いえ、今は俺、ひとりです。』

「っていうか、お前、今、どこにいるんだよ?」

『富士川サービスエリア。』

「そうじゃないだろ?ちゃんと最初から説明しろって。」


彼からの質問に対し事実を伝えただけ。
それなのに、そうじゃないと説明を求められた俺は、先を急いでいるにも関わらず、伶菜と再会した時から今までの話を丁寧にした。