『・・・・・・・・・』
そんな想いが頭を過ぎっていた私は ”俺達は兄妹だから” という彼の言葉に反応できないままでいる。
その言葉を紡いだ彼はというと、左手で額を軽く覆いながら、まっすぐな瞳で私をじっと見つめている。
相変わらず静寂な空気が私達二人を包み込んでいる。
その空気を切り裂くように、突然彼は額から左手を振り払い、そしてニッコリと笑った。
「一緒に暮らすかどうかの返事は急がなくてもいい。気持ちが決まったら教えてくれればいいから・・・・」
穏やかな彼、日詠先生の声
何度聞いても心地いい
もっと聞いていたい、この声を
「さて、祐希クンも眠っているようだし、ちょっと彼を看護師さんに看てもらって1階の食堂で一緒にメシでも食いに行くか?って誘いたいところだけど・・・」
『・・・・・・・・?』
「食堂もこの時間じゃもう閉まってるかな・・・病院の食堂だしな・・しかも、俺、1時から出勤だし・・・」
さっきの穏やかな声とは打って変わって、独り言のように呟いている日詠先生の声を聞いた私は
俺達兄妹だからとか、先生のコトがスキとか、一緒に暮らすかどうか考えるとかという自分にとって今ひとつ現実感のない空気から一気に現実に引き戻され、
慌てて左手首にはめていた自分の腕時計に目をやった。
今は、20時15分
今、ここを出れば、名古屋まで行く新幹線の終電には間に合うと思うから・・・
普段、日詠先生、休みなんかなさそうだから、せめてこんな時ぐらい、自宅で一晩ゆっくり眠って明日の午後1時にゆっくりと出勤して欲しい
早く、駅へ向かって
早く、名古屋へ帰って
日詠先生!!!



