『旦那さん・・・か。傍から見ると、そう見えるのか?』

事実とは異なるのに、照れくさいという感情
呼ばれ方で照れくさいなんて思ったことなんかないから、どうも落ち着かない

けれども、嫌ではない自分もいるのも驚きだ
昔は付き合っていた女性が ”日詠クンは私の彼氏。” と自分のことを他人にそう紹介するのも、鬱陶しいと思っていたぐらいなのに


『本当に俺が旦那だったら・・・・』

伶菜、ひとりにこんなにも背負わせない


『もし、俺が旦那だったら・・・・』


ひとりにはしない
心細い想いはさせない

そして

伶菜に母さんみたいな想いを
祐希君に俺みたいな想いをさせない


『机上の空論にしたくはないけれど、選ぶのは伶菜だからな。』

点滴をしてもらい、ベッドでスヤスヤと眠る伶菜。


今という時間は、彼女が気を失いながらも、ようやく手にしたリラックスできる時間なんだろう
その時間を台無しにしてはいけない

俺は自分がしたお節介な提案に対する彼女の答えはじっくりと待とうと心に決め、彼女のすぐ傍で体を伏せて一緒に眠った。
俺にとっても伶菜と過ごすこの時間は久しぶりの穏やかな時間だった。

心のどこかで、このまま時間が止まってしまえばいいのに・・・
そんなことを考えてしまうぐらい穏やかな気持ちにさせられた。