『俺のお節介な提案をするのは、今じゃなかったみたいだな。』
役に立っているという手応えを得られるチャンスをも逃したらしい俺は気を失ったままの伶菜をそっと抱きかかえ、顔にかかった髪を指でそっと除ける。
『貧血も相変わらずありそうだし、かなり疲れているだろうから、まずはちゃんと診て貰わないとな。』
今、腕の中にいる彼女にどんな治療をしてあげればいいのかわかっているのに、自分が従事している病院ではないこの環境では、それをしてあげることはできない。
「どうされました?」
『急に気を失ったんです。元々、ヘモグロビンの数値もかなり低かったですし、ここ最近、産後間もないの体で子供の看病をしていたので、かなり疲労が溜まっているかと。』
だから伝える
自分が把握している範囲での情報を・・・
「初診ですか?」
『いえ、妊娠中からこちらの産婦人科に受診しているので、それでここに連れて来ました。』
「それにしても、旦那さん、落ち着いてますね?こういう時、皆さん、凄く慌てるんですけど。」
『・・・ええ、まあ。それなりに。』
それなりにどころか凄く慌てているさ
伶菜を運んだ産婦人科外来の看護師に旦那さんと言われたことに・・・
「じゃあ、旦那さん、奥さんをこちらに寝かせてあげて下さい。」
『・・はい。』
伶菜のことを奥さんと言われたことにも対しても・・・
でも、否定するとなると、説明が色々面倒臭そうだから、このままでもいいかと思った。