ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



その後、再び戻って来た集中治療室前の待合室。
そこにはベンチに腰かけたまま眠っている様子の名古屋の日詠先生の姿があった。

日詠先生も勤務明けで疲れているだろうに、なんか申し訳ないな

でも、先生がいてくれて、本当に心強かった


私、一人じゃ
祐希が還ってくるのをきっと待っていられなかった



『ありがとうございました・・』

私は眠っている様子の彼の向かい側のベンチに腰掛け、彼を起こさないように聞こえるか聞こえないかの小さな声でそっと呟いた。



私、名古屋の日詠先生に色々聞きたい事があったのに、祐希のもとに呼ばれてしまい、ほとんど聴けていなかったな

でも、日詠先生はあんなにも寂しそうな、切なそうな瞳をしていた
だからもう、このまま聴かずじまいにしてしまったほうがいいのかな?

それとは別にまだ幾つか聴きたかったことがある
それは
黄色のリボンのかかったプレゼントの送り主の正体
彼と東京の日詠先生と私との本当の関係
そしてあのホットミルクのいれ方も


でも、先生のあんな瞳をまたまた見るのは
切ない



「ベビー・・・どうだった?」

そう言いながら日詠先生はパチッと目を開ける。


『あれ?先生、眠っていたんじゃ・・』

「・・・瞑想してたトコ。ベビーは?」

先生はイタズラっぽく笑う。


『あっ、目を覚ましたんですけど、また眠ってしまいました。でも私が来たことはわかったみたいで手を握り返してくれました。順調に行けばあさってにも一般病棟に移れるようです。』

祐希が助かったという嬉しさがこみ上げてきた私は自分でも一方的に早口で喋っていることに気が付いた。



「そっか、良かったな・・・ホント・・・良かった。」


言葉を噛み締めるように口にした先生はさっきの私のようにゆっくりと息をついた。
その姿を自分の目で見た私。
自分は決して日詠先生に見放されて東京に来た訳ではなかったんだと思えた。