ポツリポツリと紡ぐ俺の話に耳を傾けてくれている伶菜は相変わらず心配そうな顔。
「先生は何を守りたかったの?・・あっ、ごめんなさい。私・・・・」
ごめんなさいなんか、言わせちゃいけない
こんなに心配そうな顔をさせているのは、自分の過去に縛られている自分の弱さだろう
『信念・・かな』
本当は言いたい
大切でそして愛しいキミを守りたかった
いや、守りたい・・と
だが、いろいろな事情が残る今はまだそれを言うべきではないだろう
「信念・・・・ですか?」
言葉が足りない俺の答えに首を傾げる彼女。
本当の気持ちが言えないもどかしさ
それに繋がるヒントぐらいは伝えてもいいだろう
『そう。親父が抱いていた信念。それと・・・自分にとってかけがえのない・・・』
目の前にいる彼女の不思議そうな顔にそんなことを思ってしまう
本当の気持ちに気がついて欲しい
そんな自己中心的な想い
それがこぼれそうになっていた時に鳴った・・・家族待合室のドアをノックする音。
その直後に現れた、伶菜の息子に面会できることを伝えに来た看護師。
そして、
話の途中である今のこの状況をどうしたらいいのか迷っているような伶菜。
『ベビーに会いに行っておいで。きっとキミが来るの待ってるから・・・』
俺が彼女の背中を押してやるしかなかった。
そのノック音はきっと自己中心的な想いを伝えようとしていた俺に対するタイムオーバーの合図
・・・そう思えてしまったから。



