でも、ただひとつ、想定外だったのは
「コレ、私のお母さんがよく入れてくれていたホットミルクと同じ味がする・・先生は私のお母さんにそのミルクの入れ方を教わっていたのですか?」
「先生は・・・やっぱり私の・・・兄なんですね。」
息をつけるような話だったホットミルクの話題
伶菜がそれによって俺の心の中を深く掘り下げて行ったということ
彼女の兄ということしか伝えていなかったんだ
こういう流れになってもおかしくなかった
彼女が妊娠9ヶ月の時に胎児に心臓の異常があり、母体・胎児ともに命の危険に晒されるかもしれない
・・・そう思った俺は彼女達を失うことを恐れて、自分が彼女の兄だということを告白して、主治医という立場から逃げた
それでも彼女は自ら立ち上がり、俺を救ってくれた
生まれてきた祐希君とともに再出発を果たした
けれども、彼女達の人生はこれからいろいろな出来事が待っているはずだ
彼女の兄という立場でいる今、
その立場だからこそ、これからの彼女達にしてあげられることをやろう
『・・・・キミと俺は・・・・・』
そのためにも彼女に俺達の間にどんな過去があったのかちゃんと教えよう
彼女と彼女の息子
そして
俺のこれからのために・・・
『キミと俺は・・・・キミが1才になるまで一緒に暮らしていたんだ。親父が亡くなった時まで一緒に居たんだ。』
そう思ったんだ



