「高梨さん。面会までまだ暫く時間がかかりそうだから座っていたほうがいいんじゃないか?」
そう声をかけてくれた名古屋の日詠先生の顔はいつもの柔らかい表情に戻っている。
『ハ、ハイ!』
彼ら二人と私の不可解な関係に頭を悩ませていた私は彼のその一言で急いで待合室に戻りベンチに座った。
待合室に戻ってからも私の頭の中は、
祐希が無事戻ってきたことを自分の目で確認したせいか
さっきまであんなに心配していた祐希のコトよりも彼らとの不可解な関係に対する疑問で埋め尽くされている。
だから、彼と一緒にいるのに言葉を発することをすっかり忘れていた。
待合室の中はTVから聴こえてくる関東地方の天気予報を読み上げるお天気お姉さんの声だけが響く。
「これ、冷めちゃったか・・・・」
その沈黙の空気を破ったのは私の向かい側のベンチに座っていた彼・・名古屋の日詠先生だった。
彼らと私の不可解な関係
思い切って直接本人に聞いてみようかな?
でも、またさっきみたいな彼の寂しそうな瞳を見るのは
正直ツライよ
でも
このまま一人で
彼が嘘をついているのでは・・・と疑っているのもツラい
ツラいの・・・
『先生?そのホットミルク、どこで入れてきてくれたんですか?』
だから彼の寂しそうな瞳を再び見ることを恐れていた私は、自分の抱いている疑問を直接ぶつけるという ”直球勝負” ではなく、先生の声かけに噛み合いそうな返事をしながら探っていくという ”変化球” を投げることに。



