『・・・・・・・・』
胸のあたりが上がったり下がったりしている
ちゃんと息してる
祐希だ
還ってきてくれた
私のもとに
ちゃんと還って来てくれたんだ・・・・
『祐希ぃ・・』
ちゃんと還ってきてくれたという安堵感に包まれた私は、蚊の鳴くような声で祐希の名前を呟くのが精一杯。
そして、その医師達は私に会釈をした後、一言も言葉を発することなく、祐希が乗せられた小さな寝台とともに集中治療室のほうへ消えた。
その姿をじっと見送ることしかできない私。
この後、祐希はどうなってしまうの?
いつ会えるの?
手術は終わったみたいだけど
今、どういう状況なの?
『私、どうしたら・・・』
祐希が向かった集中治療室前で立ち尽くし身動きが取れなくなっていた私。
「キミとの約束、ちゃんと守ったよ。キミと初めて会った時に交わした子供を助けるという約束を。」
『えっ・・?!』
私の後方から聴こえてきたその声。
「お母さんもよく頑張ったね。」
声のする方へ振り向くとそこには
祐希の主治医である小児心臓血管外科医の東京の日詠先生が立っていて
青色の帽子とマスクを外して私に微笑みかけてくれていた。
『・・・日詠せんせ、い・・・・』
私は初めてここの病院の診察室の扉を開けた時を思い出し、自然に涙が溢れてきていた。



