「・・ゆ、夢?!」
俺の声に気がついたのか、俯いたままだった彼女が顔を上げる。
そして俺の顔をじっと見つめた彼女の視線と俺の視線が絡み合う。
『あれから、電話できなくてゴメンな・・・・』
大きくてくりくりしているその瞳にじわじわと溜まってくる涙。
それと共に大きく揺り動かされる俺の心。
”今、必要なのはきっとコレじゃない”
そう感じた俺は持っていたマグカップをローテーブルに置いた。
その瞬間、彼女の瞳から溢れそうになった涙を見た俺は
本当に今、必要なものと思われる自分の両腕
それを彼女に向かって差し出した。
『大丈夫・・・・大丈夫だ。』
ひとりですべて背負うな
俺にも預けてくれ
今度こそキミの全て受け止めさせてくれ
・・・・その想いを込めた両腕を。
そして、俺はとうとう泣き崩れた彼女の体をしっかりと自分のその両腕で抱きとめた。
嗚咽を上げながら大きく震える彼女の背中。
立っているのもままならない状態の彼女と一緒にベンチに座り込む。
こんな小さな体で
いろいろなモノをずっと背負ってきた
それが震えという形で俺の両腕を通じ直に伝わってくる。
言葉なんていらない
・・・そう思った。
彼女の体の振るえが少しずつ納まってくるのを感じ、このまま時が過ぎるのを待ってもいい
・・・そうも思った。



