【Hiei's eye カルテ16:大切な白い小さな紙切れ】



福本さんから必死の想いで受け取った小さな白い紙切れ。
そこに書かれている電話番号を目にしてようやく・・・自分が今からやろうとしていることの重大さに気がついた。

電話をかけたところで、伶菜が俺のことを受け入れてくれるのだろうか?

『でも、伶菜からかかってきた電話だ。』

なんとか弱気な想いを振り払う。


そして、”お電話頂いたみたいで、電話に出れなくて申し訳ありません。”
もしもしの後に言うその言葉を何度も頭の中で思い浮かべながら、意を決して紙に書かれた電話番号を押した。


耳の中で響く呼び出し音。
喉の奥のほうが詰まるような感じがしてきた頃、その呼び出し音が途切れた。

それなのに聞こえてこない伶菜の声。

『もしもし、高梨さん?』

喉の奥のグッと力を入れて呼びかけた。
それでもまだ聞こえてこない彼女の声。


『もしもし?高梨さん?・・・伶菜・・・・?』

慌てた俺はつい彼女の下の名前を呼んでしまう。


兄だと告白したからって、
流石に当時1才ぐらいだった彼女が兄という立場だった俺のことは覚えていないだろう

それなのに、名前を呼び捨てるなんて馴れ馴れしく聞こえるよな?
俺のその言動に驚かれてこのまま電話を切られても、おかしくはない
折角、電話してきてくれたのに


「・・・は、い。」

それでも、小さな声だったけれど、ちゃんと聴こえてきた彼女の声に安堵する。


そのせいだろうか?

『・・・元気、だったか・・・?』

俺の口から出てきたのは、ついさっき何度も頭の中で思い浮かべた事務的な応対ではなく、心から彼女に聴きたかった言葉だった。