ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



日詠先生、患者さんを助けるために頑張ってるんだ
私のせいで、きっと苦しい想いをしたのに、それでも、頑張っているんだ
私も、赤ちゃんのために頑張らなきゃ・・・・

赤ちゃんだって頑張ってるんだもん
日詠先生だって頑張ってるんだもん
今度は私が頑張る番だ

怖がらずに前に進まなきゃ・・・・


私は日詠先生からの電話で頑張れって言われていないのに頑張ろうと前向きになれた。




その後、日詠先生から電話があったあの日から
1日、2日、3日と日が経っても私の携帯電話はまったく揺れることはなかった。


『日詠先生、きっと忙しいんだね。私も頑張らなきゃ!』

私もあれから毎日、自分の病室から赤ちゃんのいるNICUに通い、看護師さんに助けて貰いながら、赤ちゃんの身の回りの世話を少しずつやるようになった。
あんなに怖がっていた抱っこもぎこちないながらもなんとかできるようになった。


『祐希・・・』

赤ちゃんにも名前をつけた。

これから心臓の手術を受ける赤ちゃんが
神様に助けてもらい、希望を持って生きていけるようにという切なる願いを込めて
祐希と名付けた。

祐の字は ”神様に助けられる” という意味があるから、祐という字を使った。

神様はきっと祐希を助けてくれる
そう信じてる




そんな切なる想いを抱いていた私は
祐希の心臓手術前に感染症を予防しなくてはという一心で、免疫成分が高いといわれる母乳でなるべく育てようと1、2時間寝てはすぐに起きて自分の乳を指で搾り出し、小さな瓶にいれてNICUに運んだ。

ようやく眠りについた矢先に「祐希くんが泣いているらしいのでお願いします」と看護師さんに起こされるのも頻繁で。
昼夜を問わず、急いで手櫛で髪の毛をまとめて病室を飛び出し、NICUにいる祐希の元へ駆けつけ抱っこしたり頭を撫でたりしていた。

祐希に生きて欲しくて必死だった。
こんなに必死になれたのは日詠先生がくれたあの電話のおかげ。

日詠先生だって頑張っているんだから、私だって頑張れる

『私も頑張るね。』

眠りに就く前に携帯電話にそう語りかける日々が続いた。