『長距離運転って思っている以上に右足を酷使しているんだな。』
気持ちは前へ行こうと思っているのに、夜通し運転したせいか病棟に向かう足取りは重くてしんどい。
「日詠先生、ほぼ3時間毎の授乳ってキツイですね・・・わかってはいたんですけど、やってみるとなかなか大変です。」
そんな中、病棟で診たもうすぐ退院予定の産婦さんが口にした言葉。
それによって、伶菜も同じようなことを感じているのかもしれないと思うと、たった一度の夜通し運転ごときでしんどいと守りに入ってはいけない
・・・・そう思いながら手術室へ向かった。
「ナオフミくん、オペ(手術)、お疲れ様~。」
そして、無事に手術を終え病棟に戻った俺をやけにニヤニヤしながら迎えてくれた福本さん。
また何か無茶なお願いかと警戒した俺の肩をグイッと掴んだ福本さんは、
「ナオフミくんに電話があったわよ~」
顔だけでなく声までなんだか嬉しそうだ。
何かいいことでもあったのか?
まあ、俺には関係ないだろうけど
福本さんの個人的な嬉しさに首を突っ込めるほどの体力が今の俺にはない状態
正直、今は自分のことで精一杯
とりあえずどこからの電話かぐらいは聴いておかないとな
『あっ、そうですか。どこからですか?」
「どこからだと思う~?」
『勿体ぶられても予想つかないです、オレ。急ぎですか?急ぎじゃなければ、少し休んでからでもいいですか?』
いけないと思いながらも強い口調で矢継ぎ早に問いかけて、福本さんに八つ当たり
多分、俺は福本さんに甘えているんだと思う
なんと言っても付き合いが長いから
「あれ?そんな投げやりでいいわけ~?」
『さすがに今、集中力が切れてますから。』
「集中力が切れているなら、後のほうがいいわよね。電話くれたの伶菜ちゃんだし。」
『・・・・・?』