ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




溜息をつかれても仕方がない
俺の尻拭いを夜中、仮眠を取る暇がなかった奥野さんがさせられるかもしれないのだから

昨晩はそこまで考えられず、完全に見切り発車
社会人として明らかに失格だ


「真夜中にプレゼントを運ぶためだけに東京へ行くなんて、昔の彼女達が聴いたら、羨ましいって泣くわよ。まったく・・・」

『・・・・・・・・・』


電話で話していることもあって顔が見えないだけに言葉の続きが読めない



やっぱりお説教ものだよな
学生時代は俺の素行が悪かったこともあって、奥野さんからのお説教は頻繁にあったけれど、社会人になってからはかなり減ってたのに

何、やってるんだか、俺



「清々しいわ。あたし、今ので一気に目が覚めたから、日詠くんが戻るまで代診を引き受ける。だから運転に気をつけて慌てずに戻ってきなさいよ。」

『す、すみません・・・助かります。』


説教どころか、清々しいというまさかの褒め言葉
しかも代診をすんなり引き受けてくれた
運転の心配までも

何でだ?

伶菜が何ともなかったことがわかったからか?


「お土産のメロンパンとかいらないからね。海老名名物らしいけれど。」


メロンパンか・・・
海老名のメロンパン、有名だからな


『たくさん買って帰ります。』

電話を切った俺はすぐさまメロンパンを売っているコーナーに駆け込んだことも言うまでもないだろう


『それにしても、結構買ったな。急がないと。』

両手にメロンパンの入った袋を提げて、先を急ぐ。


『もうすぐ8時か・・さすがに腹が減ったよな。』


休憩を取っている時間もないため、運転したままついさっき購入したばかりのメロンパンの入った袋に左手を伸ばす。
そして無事に手に取ったメロンパンを頬張りながら運転を続けた。