「もしもし、伶菜ちゃん、お待たせ!番号はね・・・・・」

再び星に願いをのBGMと入れ替わって聞こえてきた福本さんの声。
筆記用具を持っていなかった私はまだかなり痛むお腹を押さえながらしゃがみ込み、少しぬかるんだ地面に指で電話番号を書いた。


「本当は患者さんに医師個人の電話番号を教えちゃいけないんだけど・・・・伶菜ちゃんは日詠先生の妹らしいから。」

『・・・・・・・・』

福本さんも知っているんだ
私が日詠先生の妹かもしれないということを


「日詠先生本人も伶菜ちゃんのコト、本当に心配してるから、よかったらまた電話してあげて・・・・」

ナースステーションの電話で話しているせいか、福本さんは珍しく囁き声になっていた。


『ハイ。ありがとうございます!電話してみますね!』

「伶菜ちゃん・・・暫く大変だろうけれど、身体に気を付けてやってね!」

『ハイ!福本さんも!』


私はしゃがみ込んだまま電話の向こう側にいる福本さんに頭を下げて電話を切った。
そして、産後の疲れというものが出たのか私は足元をフラフラさせながら立ち上がった。

その後、地面に書いた日詠先生の携帯電話の番号を自分の携帯電話のアドレス帳に早速登録し、ゆっくりと右足を動かして地面に書いた番号を消した。


その瞬間、お腹の手術の傷跡が(うず)く。
でも、このままずっとここにいるわけにはいかない私は痛むお腹に手を当てながら病室へ戻った。

その後、私は昼食を取りながら、日詠先生にどうやって話をしたらいいのかずっと考えていたけれど、まったくいい案が思い浮かばず。
昼食後にベッドに横になっても考えていたけれど、産後特有の急な身体の変調もあってか、うっかり眠ってしまった。
そして、夕方、坂上先生の回診で起こされるまで、そのまま眠っていた私。


夕方かぁ
そろそろ日詠先生、仕事終わったかな?

取りあえず、いろいろゴチャゴチャ考えずに
子供が産まれたというコトを伝えればいいかな?

でも・・・・



ブーーーン、、ブーーーン・・・



頭を悩ませていた私だったけれど、突然、照頭台に置いてあった携帯電話が揺れたことにはちゃんと気が付いた。
そして急いでそれを手に取ってこの電話を鳴らした相手を目で確認。

その瞬間、私は携帯電話をグッと握り締めずにはいられなかった。