『福本さん、手術着ってもしかして緑色ですか?』

「ええ、緑色よ~。出勤した時に先生が手に持っていたのも緑色の大きいメロンパン!それを(かじ)りながら出勤してきたから、相当急いでたみたいね。日詠先生、カッコイイのにそんなコトしてたらお嫁さん来ないよ!って言ってやったら、”忙しいから暫くいらない!” って苦笑いしてたわよ・・・・」

福本さんは私を元気付けようとしたのか、メロンパンを持ち出しながら私の質問に答え、電話の向こう側で大笑いをしていた。


「あっ、そうそう。日詠先生ね、今日、まだこの後手術が続く予定らしくて何時に終わるかわからないから先生の携帯電話の番号を教えておくわね。ちょっとそのまま待っていてくれる?」

そしてまた、何かを探しにいったらしい福本さんの代わりに、星に願いをのオルゴール音が再び優しく耳に流れ込んできた。


手術着で出勤
しかも、緑色の手術着でなんて

やっぱりあの紙袋を持ってきたくれたのは、日詠先生なの?

さすがに真夜中は新幹線も都内の地下鉄も動いていないはず

日詠先生はその手術着のまま、真夜中の高速道路を走り
黄色のリボンのついた箱を東京の・・・ここの病院の看護師さんに預けた後
すぐにその緑色の手術着のまま、名古屋まで車を走らせたの?
夜通し車を走らせたの?

もし、私のこの仮説が事実ならば

私・・・・
私、やっぱりアナタの声が聞きたいです

アナタに見放されたと思っている私は
名古屋を発つ前に アナタに会うことも、アナタの声を聞くこともできなかったけれど
自分勝手かもしれないけれど、今はとっても
アナタの声が・・・・聞きたい