えっ?! また?
「もしもし?こちら産科病棟福本です。」
今度こそ日詠先生が電話口に出ると思い込んでいた私。
女性の声がまた聞こえて驚いたけれど、心の準備が間に合っていなかった私はフッと胸を撫で下ろす。
『福本さん・・・・』
「もしかして、その声は伶菜ちゃん?伶菜ちゃんなんでしょ?」
気の抜けた声でも福本さんにはその電話の向こうの声の主はすぐにわかったようだった。
『ハイ、ご無沙汰しています。』
私は懸命に自分の声を引き締めるように努力。
「今、東京でしょ?もしかして産まれた?」
『あっ、ハイ。昨日・・・』
日詠先生に用事があって電話したけれど、久しぶりの福本さんと会話を交わしたことで我に返った私のテンションは一気に上昇する。
「赤ちゃんは・・・無事?」
『今・・・NICU(新生児集中治療室)で治療しています。』
折角上がったテンションはNICUという言葉によって赤ちゃんを抱っこしてあげられなかったというコトを想い出し、私は携帯電話を耳に当てたまま肩を落とした。
「大丈夫よ!そこのNICUは評判いいから。それに伶菜ちゃん、電話してきたのは私目的じゃなく、日詠先生でしょ?」
弱音を吐いたつもりなんかなかった。
それなのに福本さんは私の声を聞いただけで、私の気持ちを瞬時に読み取っていた。
『ハイ。でも、福本さんの声も・・・聞きたかったなって・・』
私は福本さんに心配をかけないように明るく振舞うように努力した。
「嬉しいコト言ってくれるね、伶菜ちゃんは。ところで、日詠先生なんだけどさ、今、手術中なの。今朝、手術着のまま出勤してきて、夜中、緊急で呼び出されたのかって聴いたら、”違う” なんて言ってたけど・・・・・・・」
えっ?
手術着のまま出勤?!



