ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋



『暗くて見えないけど、昔、潮干狩りで皆で来たことがあったっけ。』


眠くならないようにコーヒーでも飲もうと立ち寄った浜名湖サービスエリア。
平日であるせいか、大きなトラックが多く停まっており、トイレ付近では疲れた表情のドライバーが多く行き交う。
夕食時間帯から少し遅い時刻だったが、それでもフードコートは多くのドライバーで賑わっている。

そのドライバー達の視線を集めているらしい俺。
なぜだろう?と考えた結果、自分が着替えることなく手術着を着たままクルマに飛び乗ったことに気がついた。


『ここで急患が出たとか思われちゃいけないよな・・・』


俺は買ったコーヒーを人影が少ない外のベンチに腰掛けて飲むことにした。
建物から少し離れたこの場所は浜名湖がよく見えそうな場所。
暗くて湖面の状態は見えないが、ほんのりと吹く潮風を気持ち良く感じられる。

日々の忙しさから離れたこの場所で、
最近の目まぐるしい日々を送っていた俺でも少し息をつけた
そんな気がした。

『ちょっと目が覚めた。』


濃い目のコーヒーを飲んで、頭がスッキリしたらしい俺は再びクルマに乗りこむ。


『右ルート?左ルート?どっち行けばいいんだ?先でまた合流するみたいだけど、何が違うんだ?』

もうすぐ静岡という辺りで車線が大きく2つに分かれていることに戸惑わずにはいられない。
だから、多くのトラックが向かう車線ではないほうへとりあえず進む。


『天気が良くても、暗いと富士山も見えないよな。』

独り言で再び襲って来始めた眠気を誤魔化す。
そろそろ聞き飽きたお気に入りの洋楽アーティストのBGMからFMラジオに切り替えようとするも、チューニングに手間取る。

やっとのことで聞こえてきたFM放送に一安心してアクセルを踏む。


『首都高だ。』

走り慣れていない首都高でも、ナビがあるから安心。
ナビの音声に逆らうことなく素直に運転を進める。


『午前3時半・・・か・・・急がなきゃな・・・』

途中、眠気に襲われ何度か休憩を取った影響もあってか、結構時間はかかったがなんとか目的地に到着した。