【Reina's eye カルテ14:新米ママの戸惑い】



出産して間もなくして赤ちゃんと離れ離れになってしまった私は手術室から病室へ運ばれ休んだ。

前の晩、一睡もしていなかったせいもあってか、私は病室へ到着してすぐに眠ってしまった。
そして翌朝、看護師さんに起こされるまでずっと眠り続けていた。

ようやく目を覚ました私。
食事を摂った後に車椅子に乗せられて赤ちゃんが治療を受けている新生児集中治療室(NICU)へ看護師さんとともに向かう。

NICUの入り口にはセキュリティーの為の防犯カメラとインターホンが設置されている。
決して気軽には足を踏み入れられないその場所の前で私は完全に気後れをしてしまった。


「産婦人科の高梨伶菜さんをお連れしました。」

「はい、どうぞ。」

インターホン越しに看護師さん同士が連絡を取り合い、入り口の自動ドアが開いた。
車椅子から降りて歩いて中に入ると、そこには赤ちゃんの姿はなく、大きな洗面台が設置されているだけだった。

そこでスリッパを履き替え、手を洗ってから更衣室内に入り、感染症などのばい菌をNICU内に持ち込まないように感染予防のガウンを着る。
それでも、まだ赤ちゃんの姿は見えず、目の前にあるのは頑丈そうな自動ドアだった。

その自動ドアが開いた瞬間、どこからともなく



キンコーン、キンコーン―――――――


甲高い電子音が聴こえてくる。
その音に驚いた私はそれ以上前に進めずにドアの前で立ち尽くす。



キンコーン、キンコーン、キンコーン



さっきとはまた違う方向からも聴こえてくるその音。
ドラマとかでその音が鳴っていると、命が危ないサインである事が多い。

そんな音が至るところで鳴り響いている。
私の赤ちゃん、大丈夫なの・・・?

私は自分の赤ちゃんの姿を見ていないのにも関わらず、そんな音を耳にした事で怖くなった。


「高梨さんですか?こちらです。」


ドアの前に立ち尽くしていた私に気が付いた看護師さんが私の赤ちゃんがいるベッドまで案内してくれた。

そこには

鼻には柔らかそうなチューブが挿し込まれ
小さな左手の甲には点滴の針
足には血圧計のものと思われるベルト
そして
右手首には ”タカナシ レイナ べビー” というネームバンドが取り付けられている

・・・私の赤ちゃんがいた。