そんな不器用な俺だから
父親と彼に託した伶菜のことも気になる
父と伶菜
主治医と患者という関係になった今、このふたりはどんなやり取りをしているのだろう?
伶菜は彼女の母親と瓜ふたつ
そして
”高梨” 姓の伶菜
彼は気がついたのだろうか?
『高梨・・・か・・・』
彼女は俺が今も尚、憧れ続ける人達の娘であるということを・・・・
そんな彼女と彼
そして俺は
これからどう向き合っていくのだろう?
『あの靴の色と似ているよな・・・』
医局のデスクの一番上段の引き出しに大切に保管してある革製の空色のジグソーパズルの3つのピース。
本当はもうひとつここにあったけれど、それは机の引き出しにしまってある百貨店の紙袋の中に入れてある。
『杉浦さんっていう患者さんが言ってたことは本当だったかもしれない。』
残されたそれらを手に取り、ギュッと握った。
それら3つのピースに刻印された文字
それは
”T” と ”S” と ”naofumi”
その3つだけでは決して完成形にはならないパズル
『いつかこれが完成する時が来るのだろうか?』
俺はそのパズルのピースを再び引き出しへ戻し、勢い良くデスクの一番下段の引き出しを開けた。
そしてそこに入れておいたカトレア模様の紙袋を取り出した。
『完成させるか、させないかは・・・俺次第なのかもしれないな。』
俺はそれを手にしたまま、足の指先にグッと力を込めて走り出した。



