ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋





手術当日は絶食のため、朝早くに看護師さんが水分補給用の点滴を挿入してくれた。
食事も取ることができない私はやる事がなく、点滴の雫がゆっくり落ちる様子をじっと眺めながら手術開始時刻が来るのを待っていた。


「高梨さん。調子、どう?とうとうだね。」


午後4時。
お腹の中の赤ちゃんの主治医である東京の日詠先生が私の前に姿を現した。


「緊張してる?」

『ハイ・・・手術受けるの初めてなので。』

「赤ちゃんの体重も充分あるし、大丈夫だよ。」


先生と話をしてる途中で看護師さんがストレッチャーを引っ張って来て、手術室に今から向かうと私を迎えに来てくれた。
私は促されるがままストレッチャーの上に移り、横たわる。


「高梨さん。産まれたての赤ちゃん、抱っこするのは難しいかもしれないけれど、胸の上で肌と肌を摺り寄せてもらうといいよ。すごくあったかいから。」

先生はストレッチャーに横たわっている私の顔を覗きこみ、にっこり笑って、力強く拳を握ったまま軽くその手を振った。


『ハイ!』

私は元気良く返事をし、先生に手を振った後、看護師さん達によって手術室までストレッチャーで運ばれた。

ストレッチャーから手術台に載せられ、自分の視界の中に突然入ってきた医療ドラマでもよく出てくるまばゆい無影灯の存在によって緊張せずにはいられない私。



「高梨さん、深呼吸しておこう。」

「すぐに終わるから大丈夫よ。」


主治医の坂上先生や看護師さんがてきぱきと準備をしながら声をかけて下さったことで、気持ちが少し楽になり、私は目を閉じた。


そして手術室に入って1時間ぐらいたったところで・・・・・






オギャ、、、、、オオオギャ、、



凄く小さいながらもその泣き声が私の耳にも聞こえてきた。