「日詠センセ?」
『・・・あっ、がん検診でしたね。では隣の部屋へお願いします。』
伶菜が東京へ行ってから、他人に ”どうかしたのか?” と俺の様子を心配されることが増えたような気がする
今の俺は、今ひとつ仕事に集中できていない証拠なんだろう
看護師が上手く声をかけてくれたりして、今のところは大きな問題は起きていないけれど
このままじゃ、良くないよな
医師として頑張るようにエールをくれた伶菜の気持ちを台無しにしてしまうことになってしまう
『じゃ、2週間後に結果を聞きに来て下さい。』
「日詠先生、この患者様、ボストンにお住まいの方で・・・」
「あ~、まだ日本にいるので大丈夫です。国内であと1ヶ月位仕事できるように調整してきましたから。それに、伶菜が欲しがっていたベビー靴を買いに行かないといけないので・・・・」
伶菜の欲しがっていたベビー靴・・・?
「あの色合い、なかなか見かけないな~・・そういえば、ハンドメイドで1足しか置いてなかったから急がないと!!!!」
ハンドメイドで1足しか置いてない・・・・?!
「あれ?日詠先生ってベビー靴に興味とかあるんですか?」
目の前の患者さんをついつい凝視してしまった
さすがにもう守秘義務という建前で、返答しないとか知らないフリをするという対応をするワケにはいかないようだ



