【Hiei's eye カルテ12:宝物探しのヒント】



ここのところずっと、東京医科薬科大学病院への転院を勧めた伶菜のその後の様子が気になるという気持ちと闘いながら仕事に向かう自分がいる。

東京医科薬科大学にメール送信した翌日も例外ではなく。
その日は外来診察日だった。


「日詠先生。次の患者さんなんですが・・・」

ベテラン外来看護師の佐々木さんが珍しく困った顔を見せる。


『どうしました?』

「本当は婦人科で対応するケースだと思うんですけど、どうしても日詠先生にお願いしたいっておっしゃっていて。」

『受診理由は?』

「子宮がん検診です。アメリカのボストンからわざわざ戻ってきているんだからって・・」

佐々木さんは渋い顔をしながら溜息混じりに受診理由を伝えてくれた。



『ボストン・・・ですか。わざわざって・・・どういう・・・』

「どうします?日詠先生じゃなきゃこのまま帰るって。」



なぜ俺なのかはわからない
もしかして俺がアメリカ留学中に世話になった人かもしれない・・とか?


『・・・まあ、がん検診は大事ですから、一番最後の順番まで待っていてくれるのならば、僕が診ます。次回は婦人科へということも伝えながら、どうなさるかご本人にお伺いして頂けますか?』

「わかりました。聴いてきます。」

苦笑いしながら、待合室へ向かった佐々木さん。

その後、彼女が ”一番最後でいいそうです” とへらりと笑いながら診察室へ戻ってきてからは、予約患者さんを先に診察し、そして、この日の一番最後となった患者さんの順番まで辿り付いた。



「こんにちは~♪ お願いしま~す。」


診察室内ではあまり耳にしたことがないような威勢のいい声で挨拶をする女性が入って来た。