ちゃんと聞こえた、目の前にいる日詠先生のはっきりとした返答。
予想していたはずだったのに
『本当に父親・・・・なんですか?』
直にその言葉を聞いた私は彼の言葉を疑う質問を投げかけずにはいられなかった。
そんな私を先生は目を開いてじっと見つめてくる。
「彼から、何も聞いてない?」
聞いてないもなにも
日詠先生から聞いていたのは ”父親は産婦人科医” という事なのに
日詠先生の父親だと言うその人は
私のお腹の中の赤ちゃんの心臓の執刀をする予定の小児心臓血管外科医
『・・・・・・ハイ。』
だから私はそう答えるしかなかった。
日詠先生の父親だというその人に、それ以上質問することができなかった。
だって
日詠先生には何か事情があって事実と異なるコトを言っていると悟ってしまったから
しかも
日詠先生に ”自分は君の兄” と言われた私が
日詠先生の父親というその人の顔を知らなかったんだから・・・



