「彼女は産科の主治医になる坂上さん。まだ若いが腕は確かだ。そして私はお腹の中の赤ちゃんの主治医になる小児心臓血管外科医の・・・・・・」
その男性医師は自ら自己紹介をしてくれていたが、まだ地に足が付いていない状態の私はそれを集中して聞くことができていなかった。
「高梨さん、名古屋からいらっしゃったから疲れたでしょ?大丈夫?」
『・・・・大丈夫・・・です。』
私は涙の跡でグチャグチャになってしまった顔をなんとか笑顔に変える努力をしながらそう答えた。
「坂上くん、ごめん。僕、先に高梨さんの診察してもいい?いつオペの呼び出しがあるかわからないから・・・時間がある内にしっかりと診察しておきたいんだ・・・・いいかな?」
「ハイ、勿論。そのつもりでしたから。高梨さん、私も後ほどしっかりと診察させて頂きますね!」
女性医師の坂上先生は私に軽くウインクしながら会釈をし、診察室から出て行ってしまった。
「さて、早速だけど・・・超音波検査をやらせてもらってもいい?」
私は真っ先に首を縦に振った。
超音波は痛くも痒くもない検査だけど、2回目に自殺しようとした時を想い出してしまい苦手だった。
でも、日詠先生のおかげで私の超音波検査の苦手意識がなくなっていたから、検査実施をすぐに受け入れることができた。
私がベッドに横になった直後、看護師さんによって診察室内の電気を消され、診察室内は真っ暗になる。
ウイーン・・・・・・
診察室内に超音波検査機器の音が響き、苦手意識はなくなっていたもののやっぱり緊張感を覚えてしまった私。
緊張すると検査結果に影響とかしちゃうのかな?と気にかけていた時、お腹の上で動かされていた検査器具の動きがピタッと止まった。



