ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




入った診察室は名古屋の病院と同じような造り。
机の上にパソコンが置いてあって、そのすぐ傍には患者さんが座る椅子。
少し離れたところには、ベッドと超音波検査の大きな機械もある。

違うのは
そこにいるのが日詠先生ではなく
青い手術着の上に白衣を着たちょっぴり白髪混じりの男性医師が座っており、その後ろには若い女性医師が立っていること。


「どうぞ、こちらに腰かけて下さい。」

その男性医師は微笑みながら丸椅子に腰掛けるように勧めてくれた。
その微笑みを見た私はなぜか、自殺しようとした私を助けてくれた時の日詠先生を想い出す。

この先生は気の小さい自分をちゃんと受け入れてくれそう

そう思った私は一言も返事をしないうちに涙が溢れてきてしまった。


「泣けちゃったかな・・・・そうだね。」

『す、すみません・・・』

「突然、胎児に異常があるからって言われて、辛かったね。泣いていいんだよ。」


名古屋で日詠先生に見放されたと思っている私は
自分の想いを汲んでくれたその一言で
この人
この先生こそは
自分をちゃんと受け入れてくれると確信した私は初対面かつ人前であるにも関わらず嗚咽を上げながら、泣いた。

そんな私をその先生は優しく微笑みながら暫く見守ってくれていた。




『すみません・・・突然、泣いちゃって。』

涙を流したことで緊張が少し解れた私はそう言って頭をペコリと下げた。


「いいんだよ・・・・それでいいんだ。」

そう言いながらその先生は真っ白いタオルを私に差し出してくれた。
受け取ったタオルで顔を拭った私はさっきまでの不安感からも解放され始めていた。