ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋




「高梨さん、大丈夫?」

『・・・大丈夫です。すみません、こんな時間まで。」

「いいのよ。こっちこそごめんなさい。アナタが眠っている間に採血させて貰ったけど、貧血みたいね。鉄剤、処方しておくから帰りに貰って帰ってね!」

さっきまで日詠先生が座っていた診察室の椅子に奥野先生が座り、パソコン入力をし始めた。


『あっ、ハイ。』

私はベッドに左肘をついて上半身を軽く起こして返事をする。


「一応、内診させてもらっていいかしら?東京の病院に転院するって聞いてるから・・・・東京までの移動とかも心配だから一応確認させてくれる?」


奥野先生の内診は丁寧で最初の頃よりは抵抗感が少なくなっていた私はコクリと頷いた。

そしてややふらつく足元に気をつけながら診察室に隣接している内診室の内診台に上がった私。
内診台のカーテンの向こう側ではカチャカチャと響く内診器具らしき音と奥野先生がはめるゴム手袋の音が忙しく混じり合う。


何度内診を受けてもやっぱり緊張する瞬間。

「あっ、大丈夫そうね。子宮口も開いてないし。」

さっきまで気を失っていた私は奥野先生の言葉を聞き、お腹の中の赤ちゃんが無事であることにホッと胸を撫で下ろした。


『奥野先生。』

「何か気になること、あった?」

『その・・・なんで、私の内診は先生がやってくれていたの?主治医ではないのに・・・』

「・・・・・・・」


いつもはハキハキとした受け答えが印象的な奥野先生が珍しく言葉を失う。

『先生?』

「・・・こんな所でカーテン越しに話をするのもなんだから、診察室に戻りましょ。ゆっくり着替えていいからね。」

『ハイ。』

私は内診台から降りて、急いで衣服を着て診察室に戻った。