そういえば、さっきの私
この場所で”このまま先生に診て欲しい”って、日詠先生に突っかかったっけ
東京の大学病院に転院しろって言われて
お腹の中の赤ちゃんの心臓に異常が見つかったって言われて
ここで産むことは出来ないって言われて
自分は出来ないって言われて
私は日詠先生に突っ掛かって、当たり散らしてしまったんだ
そして
自分は私の兄なんだと言われて
その直後、気を失っちゃったんだ、私・・・
でも気を失うというハプニングは
突然の宣告で無駄に熱くなり、グチャグチャになってしまった自分の頭を冷やすいいきっかけになったかも
ガラガラガラ
さっき日詠先生が出て行った診察室の奥の出入り口のドアがゆっくりと開いた。
そこから入ってきたのは白衣を着た女性。
「高梨さん、目を覚ましたって?」
その人はいつも私が外来診察に来た時に、内診だけして下さる奥野先生。
直接、手で子宮や膣に触れてその状態を診るという内診は妊娠発覚時の頃はすごく抵抗感があった私。
主治医は日詠先生なのに、内診だけは奥野先生
主治医は私と話をして、お腹の上からあてる超音波検査をする程度の診察
抵抗はあるものの内診のほうが、重要な診察のような気がしていたけれど
きっとこの病院はそういうシステムなんだ
勝手にそう思うことにしていた
だって、内診を男性である日詠先生にやってもらうのは、すごく気がひけたから
いや、男性だからじゃなく、日詠先生だから
私が今、最も気になっている人だから、気がひけたかも
だからその不可解なシステムも私にとっては都合が良かった



