そんな奥野さんに心が弱ってしまっていた俺は曝け出さずにはいられなかった。
『でも、俺は自分の手で伶菜を救ってやれなかった。』
「・・・・・・・・」
『万が一という事態に陥った場合・・・・医師として冷静でいられる自分が想像できなかった。』
「・・・・・・・・」
『本当に情けないです。自分だって医師なのに・・・・本当に助けたい人を助けられない自分が。一緒に診て頂いたのに、自分から降参してしまって申し訳ないです。』
今の自分の素の想い
そして
伶菜から自分が逃げた言い訳を。
それぐらい俺は心が弱くなっていた。
「ドクターだって人間よ。感情だってある。だから今回の日詠クンの対応は理解できなくはない。でも、全てを諦めたような想いを抱くことだけは許せない。」
奥野さんは同じ医師として、俺の判断を理解してくれた。
でも、奥野さんという人間は
「伶菜ちゃんは今の状況から逃げないって信じてる。だから・・・」
『・・・・・・・・』
「闘おうとする伶菜ちゃんをもう一度、アナタが追い求めなさい。誰にも心を預けようとしなかった、学生時代の頃のアナタのように。」
『学生時代の俺・・・?』
「難しいことを一切考えることなく、ただ純粋に彼女のことを捜していた・・・そんな日詠クンよ。」
伶菜と向き合うために着ていた白衣を脱ぐ選択をした俺が彼女から逃げることを許してくれなかった。



