今もそうあるべきなのに
「なんで?・・・・先生は、どんな難しい手術でも、その手を使って、その神の手を使って手術できちゃううんでしょ?なんで?」
『・・・すまない。俺には、できない・・・』
「・・・・なんで?なんとしてでも助けてくれるって言ったじゃない!」
守ってやりたいと思っていた相手である伶菜に詰め寄られても、医師としてのプライドを自ら手放した。
『俺は、君の・・・・・』
そして、その代償として手に入れようとしたのは
『君の・・・兄だから・・・・・』
彼女を守るための白衣を脱いだ自分を正当化する言い訳。
自分が彼女に近い関係であること
そして
そういう関係にある人の治療では冷静な判断をすることが難しいこと
それらのせいで俺は主治医という立場を手放すんだと自分自身を正当化して、自分を守る
そんなズルいことだった。
でも自分を守っているばかりでは彼女を守れない
そのジレンマを拭い去ることができない俺は彼女の前から消えた。



